不動産を購入する際、住宅ローンを利用する多くの方が経験するのが「抵当権の設定」ですよね。
日常生活ではあまり聞き慣れない言葉ですが、ローン返済に関わる重要な手続きのひとつです。
一般的にこの手続きには、登録免許税や司法書士への報酬など、さまざまな費用が発生しますが、
「これらの費用は誰が負担するの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、抵当権の基本から費用の内訳、よくある質問までをわかりやすく解説していきます。
この記事で分かること
- 抵当権の基本的な仕組み
- 抵当権設定にかかる具体的な費用の内訳
- 抵当権に関する費用負担の一般的なルール

章の後半では、抵当権設定費用に関するよくある疑問についても解説していますよ。
抵当権とは?基本をわかりやすく解説

そもそも、抵当権とは何を指すのでしょうか?
抵当権とは、債権者がローン返済の滞納に備え、不動産などを担保として契約を結ぶ権利のことです。

まずは、抵当権の基本的な概要を見ていきましょう。
そもそも、抵当権って何を指すの?
抵当権(ていとうけん)とは、お金を貸した人(債権者)が、万が一、返済がされなかったときに備えて、不動産などの財産を担保として確保するための権利です。
抵当権の役割
抵当権の設定には、主に2つの役割があります。
①債権者を保護する
貸したお金が返済されない場合でも、不動産を競売にかけて代金から回収できるため、貸す側は一定の安心感を得られます。
②借りる側の信用を高める
不動産を担保に入れることで、借り手は「返済能力がある」とみなされ、より良い条件で融資を受けられるようになります。
なぜ抵当権の設定が必要なのか
先ほどの役割について、もう少し掘り下げてみます。
抵当権の設定は、債権者(お金を貸す側)の権利を守るだけでなく、債務者(お金を借りる側)にとっても、資金調達の選択肢を広げるというメリットがあります。

債権者・債務者それぞれのメリットを2つずつ見てみましょう。
債権者側のメリット
債権者側のメリットとして、主に以下の2点が挙げられます。
①万が一返済されなかった場合に担保不動産を売却して回収できる
返済が滞った場合でも、抵当権によって担保不動産を差し押さえ、競売によって債権を回収することができます。
②貸し倒れリスクの軽減
担保があることで債務不履行時のリスクが減り、安心して融資を行うことができます。
債務者側のメリット
一方で、債権者側の主なメリットとして、以下の2点が挙げられます。
①金利を抑えられる可能性がある
不動産などを担保にすることで、無担保よりも信用度が上がり、比較的低金利での借り入れが可能になります。
②高額な融資を受けやすくなる
担保があることで貸し手の安心感が増し、無担保よりも大きな金額を借りることができます。

抵当権の基本的な概要については、以下のコラムでもまとめています。
参照コラム
・なぜ抵当権が必要?マイホーム購入前に知っておきたい債務と担保の基本
抵当権の設定にかかる費用とは

住宅を購入したことがある方であれば、抵当権の費用について「誰がどれくらい支払うのか」イメージがつくかもしれません。
ここからは、初めて抵当権を設定する方向けに、設定時にかかる費用の内訳について詳しく見ていきましょう。
抵当権設定にかかる主な費用
抵当権を設定する際には、主に以下3つの費用が発生します
①登録免許税
②その他費用
③司法書士費用

上記3つについて、それぞれ見てみましょう。
1. 登録免許税
抵当権を設定する際には、法務局に対して登録免許税を納める必要があります。
住宅ローンなどの一定の条件を満たす場合、租税特別措置法により、税率が0.1%(1000分の1)に軽減されることもあります。
ただし、原則として、抵当権設定登記にかかる登録免許税の税率は次の通りです。
抵当権設定登記にかかる登録免許税額 = 住宅ローンの借入額 × 0.4%
参照サイト
・国税庁『No.7191 登録免許税の税額表』
2. その他費用
登録免許税は大きな費用の一つですが、抵当権を設定する際にはその他の費用も考慮する必要があります。
その他の費用として、以下の4つの項目が挙げられます。
①収入印紙(金銭消費貸借契約書用)
②登記事項閲覧費用
③登記事項証明書
④印鑑証明書 など

なお、①は数千円から数万円の範囲で、②③④はそれぞれ数百円程度を目安としておきましょう。
3. 司法書士に依頼する場合の報酬相場
抵当権の設定は、一般的に司法書士に依頼するのが通例です。
その理由は、自己申請で抵当権設定登記を行う際、金融機関との共同申請が必要となり、金融機関側のリスクが高いため、許可が下りにくくなるからです。
司法書士に依頼する際の費用は事務所ごとに異なりますが、一般的な相場は3万円〜10万円程度とされています。
登録免許税の実例
登録免許税の実例を一つ見てみましょう。
たとえば、3,000万円の住宅ローンを借り入れ、抵当権を設定する場合、登録免許税は以下のように計算されます。
登録免許税額 = 借入額 × 税率(0.4%)
3,000万円 × 0.004(=0.4%)= 12万円
ただし、これはあくまで登録免許税のみの費用です。
前章で解説したとおり、司法書士への依頼費用や印紙代など、その他の費用も別途かかる点に注意が必要です。

ちなみに、各仕業には業務範囲が決まっているため、その範囲も確認しておきましょう。
合わせて読みたいコラム
・FPに相談するメリットとは?お金と保険の専門家だからできること
抵当権設定費用に関するよくある疑問

抵当権を設定する際、さまざまな疑問が生じることがあります。
そこで、最後に、抵当権設定費用に関するよくある疑問を取り上げてみたいと思います。

抵当権に関する疑問を3つ、一緒に解決していきましょう。
住宅ローンを完済した後も抵当権は残るの?
住宅ローンを完済すると、抵当権そのものは消滅します。
これはローンの支払いが終了することで、担保として設定された抵当権も無効になるためです。
しかし、抵当権が消滅しても登記上では自動的に抹消されないため、法務局で抵当権抹消登記の手続きを行う必要があります。
抵当権の抹消にも費用はかかる?
抵当権を抹消する際には費用がかかります。
目安として、1つの不動産につき1,000円程度です。
ただし、司法書士などの専門家に依頼する場合は別途料金が発生し、また、登記に必要な謄本や証明書の取得費用も考慮する必要がある点に注意が必要です。
抵当権設定にかかる費用はローン契約に含まれるの?
基本的に、抵当権設定費用はローン契約に含まれておらず、別途支払う必要があります。
ただし、金融機関によっては、手数料や登記費用をローンの一部として融資額に組み込むことができる場合もあるため、契約時にその詳細を確認することが重要です。

住宅ローンを組む際には、一度専門家に相談してみましょう。
住宅ローンに関する相談ができるサイト
・住宅ローン・住宅購入に特化したFP無料相談
まとめ
今回の記事のまとめです。
抵当権設定には、登録免許税、その他の費用、司法書士費用の3つがかかります。
さらに、住宅ローンを完済すると抵当権は消滅しますが、その抹消手続きには別途費用がかかることもあるため、事前に確認しておくことが大切です。