相続が発生すると、まず「遺産をどのように分けるか」を決めなければなりません。
しかし、口頭だけの約束にとどめてしまうと、後々トラブルの原因となる恐れがあります。
そこで重要となるのが 遺産分割協議書 です。
これは、相続人全員が遺産の分け方について合意し、その内容を明確に記録するための書類です。
本記事では、遺産分割協議書の基本的な役割と、その活用方法について解説します。
この記事でわかること
- 遺産分割協議書の概要
- 遺産分割協議書がなぜ必要なのか
- 遺産分割協議書作成の際に押さえるべきポイント

遺産分割協議書の作成がどのように役立つのかを学んでいきましょう。
遺産分割協議書の基本とその重要性

そもそも、遺産分割協議書とはどういったものを指すのでしょうか。

まず最初に、遺産分割協議書の基本的な特徴を見ていきましょう。
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遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書とは、故人が遺した財産を相続人がどのように分けるのかを記載した書類です。
作成は法律上の義務ではありませんが、相続内容を明確にし、不動産や預貯金などの名義変更を進める際には欠かせません。
具体的には、法定相続人(配偶者・子・父母・兄弟姉妹など)が相続する預貯金、不動産、株式、債務などについて、誰がどの財産を相続するのかを明確にするために作成されます。

ちなみに、相続方法には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つがありますよ。
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なぜ遺産分割協議書が必要なのか?
遺産分割協議書の作成目的は、相続人間の争いを防ぎ、相続手続きを円滑に進めることです。
そして、遺産分割協議書が必要となる場合には、主に以下の3つが挙げられます。
①遺産分割の方法が法定相続分と異なる場合
②遺言書がなく、相続人で遺産分割を決める場合
③遺言書にない財産が見つかった場合
遺産分割協議を行った場合、その結果を協議書として残すことが求められます。
例えば、相続人が子ども3人で、相続財産が家屋と車2台の場合、法律上では子ども3人がそれぞれ3分の1ずつ相続します。
しかし、相続人同士で遺産分割方法に合意すれば、家屋を長男が単独で相続し、車2台を次男と三男で分けることも可能です。

上記の場合、原則として遺産分割協議書が必要ですが、遺言書がある場合や相続人が1人の場合は不要です。
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・遺贈・相続・贈与の3つの違い|遺産引き渡しを円滑に進める選び方ガイド
遺産分割協議書の4つのポイント
遺産分割協議書を作成する際に押さえておきたいポイントとして、以下の4つが挙げられます。
①相続人全員の同意が必要
遺産分割協議書には、相続人全員の同意が必要です。
相続人が1人でも同意しない場合、協議書は効力を持たないため、全員が納得した内容で作成することが重要です。
②相続財産の詳細な記載
相続する財産(預貯金、不動産、株式、債務など)は、可能な限り詳細に記載します。
それぞれの財産について、誰がどの部分を相続するのかを明確に記入することが求められます。
③法定相続分に基づく分け方の確認
遺産分割協議書は、法定相続分を基本に作成されることが多いですが、相続人間で合意があれば、法定相続分に関係なく分割することも可能です。
④署名と押印の実施
遺産分割協議書には、相続人全員の署名と押印が必要です。
また、印鑑証明書の添付と、相続人全員が1通ずつ所持することが求められます。

遺産分割協議書の具体的な作成手順については、第3章で解説していきます。

遺産分割協議書がない場合のリスクとは?

遺産分割協議書を作成する主な目的のひとつは、相続人同士の争いを未然に防ぐことです。
これにより、相続に関する誤解やトラブルを避けることができます。

この章では、遺産分割協議書がない場合に生じるリスクについて見ていきましょう。
遺産分割協議書を作成しない場合の4つのリスク
遺産分割協議書を作成しない場合、以下4つのリスクが考えられます。
1. 相続人間での争い
遺産分割協議書を作成しない場合、相続人同士で財産の相続分について意見が食い違う可能性があります。
これにより、遺産分割がスムーズに進まず、法的に解決するまでに時間とコストがかかることになります。
2. 相続登記ができない
不動産などの相続登記には遺産分割協議書が必要です。
そのため、これがないと登記手続きが進まず、相続財産の名義変更ができません。
結果として、売却や貸し出しができず、相続財産を活用することが困難になります。
3. 相続税の申告が遅れる
相続税の申告には、遺産分割協議書が必要な場合があります。
そのため、相続税の申告が遅れたり、誤った申告が行われると、罰則が科される可能性があります。
4. 遺産分割の無効
遺産分割の内容について相続人全員が合意し、遺産分割協議書を作成していない場合、口頭や非公式な合意は法的効力を持たない可能性があります。
その結果、問題が発生すると、遺産分割の合意が無効とされることもあります。
公正証書遺言を作成した場合の利点
公正証書遺言は、公証人が立ち会って作成する遺言で、法的な効力を持ちます。
公正証書遺言を作成することには、以下3つのメリットが含まれます。
①遺言の確実性と法的効力
公正証書遺言は、公証人の立会いのもとで作成されるため、法的効力が確保され、無効になるリスクが減ります。
②遺言内容の証明力が高い
公証人が遺言内容を確認して作成するため、後から異議を唱えることが難しく、争いのリスクが減少します。
③紛失のリスクが少ない
公証人役場に保管されるため、遺言書が紛失や改ざんされるリスクが少なく、相続人は遺言の存在を確実に確認できます。

なお、後見人は遺言書の作成を行うことができないことも併せて確認しておきましょう。
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・後見人ができること・できないこと|誤解しやすい5つのポイント解説
遺産分割協議書作成の際に押さえるべきポイント

遺産分割協議書の作成には、被相続人の戸籍謄本や遺産の内容を示す書類などが必要です。
最後に、遺産分割協議書を作成する際に押さえておくべきポイントを確認しましょう。

なお、遺産分割協議書は、パソコンと手書きどちらでも作成可能です!

遺産分割協議書の作成手順
遺産分割協議書を作成する際には、次の2つのステップを行うことが大切です。
1. 相続人の確認と遺産の特定
相続人全員を確認し、相続対象となる財産(不動産、預金、株式など)を特定します。
相続人を確定するには、被相続人の戸籍謄本を取り寄せ、必要な確認を行います。
また、認知された子どもも法定相続人として遺産分割協議に関する権利を有するため、その点にも注意が必要です。
2. 遺産分割方法の決定と協議書の作成
遺産分割方法を決定するためには、相続人全員で話し合い、合意を得る必要があります。
その後、合意内容を遺産分割協議書に記載します。
相続人間で合意が得られない場合、家庭裁判所による遺産分割調停や審判が行われ、協議が長引くと相続税の申告期限に間に合わない恐れがあるため、早めに協議を始めることが大切です。

相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。
遺産分割協議書に記載する7つの項目
遺産分割協議書には、以下7つの記載事項が必要です。
①相続人の情報
相続人全員の氏名・住所・生年月日を記載し、全員が協議に参加していることを確認する必要があります。
②被相続人の情報
被相続人の氏名・住所・生年月日・死亡日を記載し、戸籍謄本などで死亡を証明する必要があります。
③相続財産の明細
相続財産(不動産、預金、株式、現金など)をリスト化し、評価額や詳細を記載します。
④遺産分割の方法
各相続人が相続する財産の詳細な分割内容を明記し、誰が何をどのように相続するかを記載します。
⑤相続人全員の合意の証明
協議に参加した相続人全員の署名・捺印を記載し、全員が合意したことを証明します。
⑥作成日
協議書が作成された日付を記載します。
⑦その他必要な情報
必要に応じて、特別な合意内容や遺言書の有無、相続人の間での特別な取り決め(例:遺産分割における特例)などを記載します。

財産評価や相続税の算出は分割時の重要事項です。
必要に応じて専門家を活用しましょう。

まとめ
今回の記事のまとめです。
遺産分割協議書は、相続人が故人の財産をどのように分けるかを記載した書類です。
主に、遺産分割方法が法定相続分と異なる場合や、遺言書がなく相続人同士で決める場合、遺言書にない財産が見つかった場合に作成します。
作成時には、相続人全員の同意を得て、財産の詳細や分け方を明確に記載し、署名・押印を行うことが重要です。