スワップ取引は、金融市場でよく使われている手法で、企業や投資家にとって、リスクをコントロールしながら資産運用を効率的に進めるための重要な手段です。
なかでも代表的なものに、金利スワップや通貨スワップがあり、それぞれに独自の仕組みと活用方法があります。
本記事では、スワップ取引の基本的な仕組みから具体的な活用例、さらにはリスク管理のポイントまでを、わかりやすく解説していきます。
この記事で分かること
- スワップ取引の基本的な仕組み
- スワップ取引の種類
- スワップ取引におけるリスクとその管理方法

スワップ取引には、どのような目的や活用方法があるのかを見ていきましょう。
スワップ取引とは?基本的な仕組みと特徴

スワップ取引は、金融市場においてリスク管理や資産運用を目的とした取引手法です。
異なるキャッシュフローを交換することで、企業や投資家は市場の変動に対応し、利益を得る一方で、リスクを回避することも可能です。

まずはじめに、スワップ取引の基本的な特徴について詳しく見ていきましょう。
そもそも、スワップ取引とは?
スワップ取引とは、異なる通貨や金融商品の金利やキャッシュフローを交換する取引のことです。
つまり、互いに異なる条件のキャッシュフローを交換することで、企業や投資家はリスクを調整したり、資金調達を効率化したりすることができます。

代表的なスワップ取引は、以下の2つに分類されます。
①金利スワップ
同じ通貨内で、固定金利と変動金利を交換する取引。
例:日本円の固定金利を変動金利に変えることで、金利変動リスクを管理する。
➁通貨スワップ
異なる通貨間で、一定期間ごとに利息や元本を交換する取引。
例:日本円の固定金利を米ドルの変動金利と交換する。
どんな目的で使われるの?
スワップ取引は主に、以下3つの目的で利用されます。
①リスクヘッジ
金利や為替変動のリスクを回避する。
➁資金調達のコスト削減
借入金利や為替リスクなどの資金調達コストを抑える。
③収益向上
有利な金利条件や通貨の交換タイミングを活用し、収益を高める。

例えば、企業が海外で資金調達する際、通貨スワップを使って自国通貨での支払いを可能にすることがあります。
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スワップ取引の種類とその活用方法

先ほどの章でも少し触れましたが、スワップ取引にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴と活用方法があります。
代表的なものとしては、金利スワップ、通貨スワップ、商品スワップなどが挙げられます。

この章では、代表的なスワップ取引の特徴について詳しく見ていきましょう。
金利スワップとは?仕組みと使い方
金利スワップ(Interest Rate Swap)は、二者間で異なる金利の支払義務を交換する金融取引です。
具体的には、1つの金利(通常、固定金利)を支払う代わりに、もう1つの金利(変動金利)を受け取るという形で取引が行われます。
金利スワップの仕組み
お伝えしたとおり、金利スワップの基本的な仕組みは、2つの異なる金利を交換することにあります。
金利スワップの3つのポイント
①固定金利と変動金利の交換構造
例えば、企業Aは固定金利を支払う代わりに変動金利を受け取り、企業Bはその逆で、変動金利を支払う代わりに固定金利を受け取るといった取引が行われます。
②金利支払・受取のタイミング
金利の支払いや受け取りは、通常年1回や半年ごとなど、契約で定められた一定の期間ごとに行われます。
③想定元本の役割
金利の計算に用いられる「想定元本」は、実際にやり取りされることはなく、あくまで利息計算の基準として使われます。
金利スワップの使い方
2つの異なる金利を交換することには、リスクの軽減やコスト削減といった実務的なメリットがあります。
金利スワップの主な利用方法
①金利変動リスクの回避
将来の金利上昇などの変動に備え、企業や金融機関は金利スワップを活用してリスクを抑えます。
②資金調達コストの削減
高い金利での融資を受けている企業が、スワップ契約を通じて実質的な支払金利を引き下げることができます。
③金利を活用した投資戦略
金利の動向を見越して変動金利を受け取るポジションを取ることで、収益機会を狙う戦略が可能です。
通貨スワップの特徴と活用シーン
通貨スワップとは、異なる2つの通貨間で元本や利息を一定期間交換する契約のことです。
具体的には、契約開始時に両通貨の元本を交換し、契約期間中はそれぞれの通貨に応じた利息を定期的に支払い合います。
通貨スワップの主な特徴
通貨スワップの主な特徴は、異なる通貨間で元本や利息を交換する点にあります。
通貨スワップの3つのポイント
①中長期の資金調達に利用される
契約期間は数年から数十年が一般的で、企業や政府間の取引が中心となっています。
②金利や為替リスクのヘッジ
為替変動や金利変動の影響を抑えるために活用されます。
③信用力が契約条件に影響する
契約条件は取引先の信用力に左右されるため、主に銀行や政府が取引の主体となります。
通貨スワップの活用シーン
通貨スワップがどのように活用されるのか、目的別の具体例を交えて見てみましょう。
通貨スワップの主な利用方法
①企業の資金調達
海外で事業を展開する企業が現地通貨で資金を調達し、それを自国通貨に換算することで為替リスクを回避します。
②中央銀行間の取引(国際金融政策)
通貨危機や金融市場の混乱時に、中央銀行同士がスワップ協定を結び、他国通貨を確保します。
③為替変動リスクの回避
貿易や投資で異なる通貨を利用する輸入企業などが、外国通貨建ての為替リスクを軽減します。
④金融機関の収益向上
銀行が低金利で調達した資金を通貨スワップで運用し、高金利の運用商品で利益を得ることがあります。

商品スワップに関しては、以下のコラムで解説していますので、あわせてご参考ください。
参照コラム
・スワップ取引の種類とは?金利・通貨・商品スワップの基本解説
スワップ取引のリスクとその管理方法

スワップ取引は高いリターンを狙える一方で、リスクも伴います。
特に、市場予測が的外れとなった場合、金利・為替レートの変動により損失が発生するリスクがあります。

最後に、スワップ取引における主要なリスクとその管理方法について見ていきましょう。

スワップ取引で注意すべき主な5つのリスク
当然のことながら、投資に絶対はなく、スワップ取引にもいくつかのリスクが伴います。
代表的なリスクとして市場変動リスクが挙げられますが、それ以外にもさまざまなリスクが存在します。

スワップ取引で考えられる主な5つのリスクについて、以下でご紹介します。
1. 市場リスク
金利や為替、商品価格など市場の変動により、スワップ取引が不利になるリスク。
具体例
固定金利を支払う契約を結んだ後、市場金利が低下する場合。
対策
市場動向を慎重に分析し、適切なリスクヘッジを行う。
2. 信用リスク(カウンターパーティーリスク)
スワップ取引を行う相手(カウンターパーティー)が契約を履行できなくなるリスク。
具体例
取引相手が倒産し、約束された支払いが受け取れない場合。
対策
信用力のある相手を選ぶ、または清算機関を介する。
3. 流動性リスク
必要なときにスワップ契約を清算できない、または取引コストが高くなるリスク。
具体例
市場の混乱時に、スワップ契約の終了や条件変更が困難になる場合。
対策
流動性の高い市場で取引する。
4. 契約リスク(法律・契約条件のリスク)
契約条件の解釈に食い違いが生じた場合など、契約内容や法的問題に起因するリスク。
具体例
法律や税制の変更によって、取引条件やコストに影響が出る場合。
対策
専門家の助言を受け、契約内容を明確にしておく。
5. レバレッジリスク(特に通貨スワップの場合)
レバレッジ(借り入れ)を活用する場合、資産価格の小さな変動が大きな損失を引き起こすリスク。
具体例
通貨スワップで高額なポジションを持ち、為替レートが予想外に動く場合。
対策
過度なレバレッジを避け、リスク許容度に見合った取引を行う。
スワップ取引のリスク管理の3つのポイント
スワップ取引のリスク管理のポイントをまとめると、以下3つになります。
①適切なリスク分散
一つの取引先や市場に依存しないようにする。
➁契約内容の確認
契約条件を詳細に把握し、リスクを最小化する。
③専門知識の活用
金融商品や市場について十分な知識を持つ、または専門家に相談する。

投資リスクなど、分からないことは専門家に相談してみましょう。
資産運用について相談できるサイト
・資産運用の相談なら【オンアド】
まとめ
今回の記事のまとめです。
スワップ取引は、異なる通貨や金融商品の金利やキャッシュフローを交換する取引です。
主に金利スワップと通貨スワップの2種類があり、リスクヘッジや資金調達コストの削減、収益向上を目的として利用されます。