『月々の医療費が高額になった場合にはどうしたらいいの?』
突然の病気やケガで医療費が高額になると、不安を感じることもありますよね。
そんなときに活用したいのが「高額療養費制度」。
この制度は、1か月の医療費が一定の上限を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。
ただし、「どれくらい還付されるの?」「本当に家計の負担が軽くなるの?」と疑問に思う方も多いはず。
本記事では、自己負担限度額の基本から具体的なシミュレーション例までを、わかりやすく解説します。
この記事で分かること
- 高額療養費制度の基本
- 自己負担限度額の求め方
- 自己負担限度額の適用例(シミュレーション)

自己負担限度額の適用について、シミュレーションを活用しながら学んでいきましょう。
高額療養費制度とは?基本の仕組みをおさらい

高額療養費制度は、1か月の医療費が一定の額を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。
ただし、払い戻しを受けるには、所得や家族構成に応じて設定された「自己負担限度額」を正しく把握しておく必要があります。

まずは、高額療養費制度の基本について確認していきましょう。
FPに無料相談できるサイト
・貯金に特化したFP無料相談
高額療養費制度の概要
高額療養費制度とは、高額な医療費がかかった場合に、自己負担額が一定の限度額を超えた分を払い戻してもらえる制度です。
対象は、日本の健康保険に加入しているすべての方で、会社員や自営業者など幅広い層が利用できます。
自己負担限度額とは?
自己負担限度額とは、医療費の支払いにおいて、患者が実際に支払うことになる上限額のことです。
高額療養費制度を利用する場合、この限度額を超えた部分については、後日払い戻しを受けることができます。
ただし、この限度額は、患者の所得や年齢などによって異なります。
例えば、収入が高い場合は自己負担限度額も高くなり、逆に収入が低い場合や高齢者には、限度額が低く設定されています。
参照コラム
・【年齢別】高額療養費制度の自己負担限度額|70歳を境にどう変わる?
制度を利用するメリット
高額療養費制度を利用するメリットには、主に以下の2つが挙げられます。
①医療費負担の軽減
高額な医療費がかかった場合でも、自己負担額の上限があることで、安心して必要な治療を受けられます。
➁急な医療費に備えることができる
急な病気や事故で高額な医療費がかかるリスクに備え、家計への影響を最小限に抑えることができます。

急な病気や事故に備えるためにも、日頃から保険を最適化しておくことも大切です。
参照コラム
・保険証券の点検はいつがベスト?見直しタイミングと8つのチェック項目
自己負担限度額の計算方法と決まり方

自己負担限度額は、自身の所得や家族構成に応じて決まるため、同じ医療費でも、個々の状況によって負担額は異なります。

この章では、自己負担限度額の計算方法について見ていきましょう。
所得区分による自己負担限度額の違い
自己負担限度額は、納税者(患者本人)の所得や年齢、家族構成に応じて異なります。
自己負担限度額の目安(70歳未満)
所得区分ごとに、月ごとの自己負担限度額が異なります。
これは主に年収に基づいて区分されており、70歳未満の方の具体的な自己負担限度額は以下の通りです。
70歳未満の自己負担限度額
1. 年収約1,160万円以上(標準報酬月額83万円以上)の場合
=252,600円 + (総医療費 - 842,000円) × 1%
2. 年収約770万円~1,160万円(標準報酬月額53~79万円)の場合
=167,400円 + (総医療費 - 558,000円) × 1%
3. 年収約370万円~770万円(標準報酬月額28~50万円)の場合
=80,100円 + (総医療費 - 267,000円) × 1%
4. 年収約370万円未満(標準報酬月額26万円以下)の場合
=57,600円
5. 住民税非課税世帯の場合
=35,400円
70歳以上の自己負担限度額
70歳以上の方は、所得区分に応じて自己負担限度額が異なりますが、70歳未満と比較して、一般的に低く設定されています。
ただし、75歳以上の方は後期高齢者医療制度に加入するため、自己負担限度額がさらに異なる点に注意が必要です。
以下は、70歳以上74歳以下の方で、所得約156万円~370万円に該当する場合の自己負担限度額の目安です。
70歳以上74歳以下の自己負担限度額
一般所得者の場合
外来:18,000円(月額)
外来+入院:57,600円(月額)
住民税非課税世帯の場合
外来:8,000円(月額)
外来+入院:24,600円(月額)
関連コラム
・後期高齢者制度を活用した医療費負担軽減のポイント【75歳以上向け】
所得区分の決まり方
所得区分は、主に年収や標準報酬月額(給与等による報酬)を基に決まります。
一般的に、年収が高いほど所得区分は上位に分類され、自己負担限度額が高くなります。
一方で、年収が低いほど所得区分は下位に分類され、自己負担限度額が軽減されます。
また、住民税非課税世帯は、低所得の世帯に対する配慮として、特に低い自己負担限度額が設定されています。
参照サイト
・高額な医療費を支払ったとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
世帯合算や多数回該当のルール
高額療養費制度では、家族全員の医療費を合算し、自己負担限度額を超えた分を払い戻すことができます。

ただし、医療費を合算する際には、以下の3つのポイントに注意が必要です。
①合算できる場合
同じ健康保険に加入している家族の医療費は合算が可能です。
また、複数の病院で受診した場合や、同じ病院で家族が別々の病気やけがで入院・通院を繰り返した場合でも合算できます。
②70歳未満と70歳以上の違い
70歳未満の場合、合算できる医療費は「自己負担が21,000円以上」のものに限られます。
70歳以上75歳未満の場合は金額の制限はありません。
ただし、75歳以上の方は後期高齢者医療制度に加入しているため、75歳未満の家族の医療費とは合算できません。
③共働きの場合
夫婦がそれぞれ別の健康保険(勤務先の健康保険)に加入している場合、夫婦の医療費は合算できません。

合算のポイントは、1か月あたりの自己負担額が21,000円以上となった医療費が対象になる点ですよ!(70歳未満の場合)。
参照コラム
・高額な医療費を支払ったとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
自己負担限度額の適用例:シミュレーションで解説

これまでお伝えしてきたように、自己負担限度額は家族構成や所得によって異なるため、実際にどのくらいの金額になるのか適切に把握しておくことが大切です。

最後に、自己負担限度額の適用例をシミュレーションで確認してみましょう。
FPに無料相談できるサイト
・貯金に特化したFP無料相談
シミュレーション例:一般所得世帯での適用事例
高額療養費制度では、同一世帯内の医療費を合算できます。
ただし、70歳未満の人の場合、1か月あたりの自己負担額が21,000円以上の医療費が対象となります。

一般家庭のTさんを例に、一か月の医療費合算のケースを見てみましょう。
具体例
Tさん(48歳、男性、会社員)の世帯
家族構成
・妻(46歳、専業主婦)
・息子(18歳、大学生)
・父(75歳、年金受給者)
・母(73歳、無職)
医療を受けた人 | 診療内容 | 自己負担額 | 合算 | 備考 |
---|---|---|---|---|
Tさん本人(48歳) | 腰痛治療(通院) | 12,000円 | × | 21,000円未満なので合算対象外 |
Tさん本人(48歳) | 腰痛治療(入院) | 75,000円 | ○ | |
妻(46歳) | 肩こり治療(通院) | 8,000円 | × | 21,000円未満なので合算対象外 |
息子(18歳) | 骨折治療 | 20,000円 | × | 21,000円未満なので合算対象外 |
父(75歳) | 糖尿病治療(通院) | 10,000円 | × | 75歳以上のため医療費合算不可能(後期高齢者医療制度) |
母(73歳) | 高血圧治療(通院) | 15,000円 | ○ | 70歳以上75歳未満のため医療費合算可能 |
図1の表に基づくと、高額療養費として合算できるのは、原則として、自己負担額が21,000円以上の医療費(70歳未満の扶養者の場合)です。
したがって、Tさん本人の75,000円、母の15,000円が合算され、合計90,000円が高額療養費制度の対象となります。

母の15,000円が合算対象となるのは、母が70歳以上74歳以下で、金額の制限がないためですよ!
限度額を適切に把握するためには?
限度額を適切に把握するためには、以下4つの点を確認することが大切です。
①所得区分の確認
所得に基づいた区分により自己負担限度額が異なるため、まず自身の所得区分を把握することが重要です。
➁年齢・扶養家族の確認
年齢や扶養家族の有無によって高額療養費制度の適用範囲が異なるため、家族構成を確認しましょう。
③医療費の合算対象を確認
自己負担が一定額以上の医療費が合算対象となるため、どの医療費が合算できるかを確認する必要があります。
④限度額適用認定証の取得
事前に限度額適用認定証を取得することで、窓口での負担が軽減されます。

さらに、ファイナンシャル・プランナー(FP)などの専門家に相談するのも有益な方法ですよ!
まとめ
今回の記事のまとめです。
自己負担限度額は、医療費の月々の支払いにおける上限額で、患者の所得や年齢、家族構成に応じて異なります。
また、同一世帯内で扶養されている家族の医療費を合算でき、70歳未満の扶養家族の場合、自己負担額が21,000円以上の医療費が合算対象となります。