妊娠や出産は、経済的な負担も考慮しなければなりません。
そんな時、公的な保障制度を活用することで、出産前後の医療費や生活費の負担を軽減することができます。
本記事では、妊娠・出産に際して利用できる公的保障について詳しく解説し、安心して出産を迎えるためのサポート情報をお届けいたします。
この記事で分かること
- 公的保障制度の概要
- 医療保険と学資保険の公的保障について
- 公的制度の申請手続き方法
入院時の公的保障制度について
出産に際し、入院は必要ですが、入院費用やその保障について理解しておくことは大切です。
まずは、入院時に利用できる公的な保障制度について見ていきましょう。
出産育児一時金
出産育児一時金は、健康保険制度に基づいて支給される一時金で、妊娠・出産にかかる費用の一部を補助するためのものです。
この制度は、国民健康保険や社会保険などの公的な医療保険に加入しているすべての人に適用されます。
支給額は原則として50万円(令和5年4月時点)で、支給方法は医療機関や助産所から直接支払われる場合と、申請者が後から受け取る場合があります。
出産費用が一時金を超える場合、その差額は自己負担となりますが、出産育児一時金を利用することで、出産にかかる経済的な負担を軽減することができます。

被保険者本人が出産した場合だけでなく、その扶養家族が出産した場合にも適用されます。
出典:
厚生労働省「出産育児一時金の支給額・支払方法について」
出産手当金
出産手当金は、女性が出産のために仕事を休む間に給与が支払われない場合、健康保険(社会保険)から支給される手当です。
具体的には、出産予定日の42日前から、出産日の翌日以降56日目までの間に給与が支払われなかった日数に対して支給されます。
多胎妊娠の場合は、この期間が98日となります。
支給額は、過去12ヶ月の平均月給を基に算出される標準報酬日額の2/3が1日あたり支給されます。
ただし、出産手当金を受け取れるのは健康保険(社会保険)の被保険者のみであり、国民健康保険には出産手当金の制度がありません。

多胎妊娠(たたいにんしん)」とは、1回の妊娠で2人以上の胎児を授かることを指し、一般的に双子や三つ子などが該当します。
出典:
全国健康保険協会「出産手当金について」
高額療養費制度
高額療養費制度は、病気やけがによる医療費が一定の限度額を超えた場合、その超過分が支給される制度です。
具体的には、1ヶ月の自己負担額が所得や年齢によって異なる限度額を超えると、超過分が支給されます(70歳未満と70歳以上で計算方法が異なります)。
対象となる医療費は、入院費、外来診療、手術費用などですが、差額ベッド代や食事代は含まれません。
また、世帯内で同じ健康保険に加入している人の医療費は、一定の条件を満たせば合算できます。
妊娠・出産に関しては、異常分娩に伴う治療や手術(例:切迫早産、帝王切開、妊娠高血圧症候群など)は適用対象ですが、正常分娩の費用は適用外です。

妊娠・出産に関する医療保険については、以下の記事等をご参照ください。
参照コラム
・妊娠中に必要な4つの保険と、その加入が重要な理由
・高額療養費制度の実例解説:自己負担限度額の適用をシミュレーションで学ぶ
妊婦保険以外にも検討したい保険とは
妊娠・出産に関連する保険には、医療保険や妊婦保険があります。
これらは、妊娠や出産時の医療費負担を軽減するための保険です。
また、将来の生活や子どもの教育費を考慮すると、収入保障保険や学資保険の活用も選択肢の一つとなります。
この章では、これら2つの保険について詳しく見ていきましょう。
収入保障保険
出産後、万が一の事態で収入が途絶えた場合に備えるため、収入保障保険を検討することができます。
これは、被保険者が死亡または高度障害になった際に、毎月一定額の給付金が支払われる保険です。
収入保障保険の魅力の一つは、保険料が比較的割安であることです。
給付金が一度に支払われるのではなく、月々分割で支払われるため、保険料が低く抑えられる傾向があります。

ただし、収入保障保険には、保障期間が経過するにつれて給付金が減少するというデメリットもあります。
収入保障保険に関するコラム
・収入保障保険を活用したリスクマネジメント
学資保険
子供の将来の教育費を計画的に貯めるために、学資保険を検討することも有効です。
学資保険は、子供の進学時期に合わせて保険金を受け取ることができるため、教育資金の準備に適しています。
学資保険のメリットとしては、教育資金を計画的に準備できることが挙げられます。
また、出産前でも加入できる学資保険もあるため、出産後の子どものためにあらかじめ備えておくこともおすすめです。

学資保険のデメリットは、保険料が固定されることと、中途解約で元本割れのリスクがあることです。
学資保険に関するコラム
・学資保険に加入するタイミングとは?
・子供の学資保険、保険料の相場はどのくらい?
妊娠中の経済的負担軽減策
これまでご説明してきた通り、出産育児一時金や出産手当金は経済的負担を軽減する制度ですが、活用する際にはいくつかのポイントを押さえておくことが大切です。

公的制度の申請手続き
公的制度の申請手続きについては、以下の5つのポイントを考慮することが一般的です。
①対象となる公的補助の確認
妊娠・出産に関連する公的補助には、出産手当金、育児休業給付金、児童手当などがあります。
➁必要書類の準備
申請には通常、以下の書類が必要です。具体的な書類は補助の種類によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
・申請書(各補助の指定様式)
・妊娠証明書や出生証明書
・収入証明書(給与明細や納税証明書など)
・健康保険証のコピー
③申請の手続き
必要書類を整えたら、所定の窓口に提出します。ただし、市区町村やハローワークなど、申請先が異なることがありますので、該当する窓口を確認しておきましょう。
④審査と決定
提出した書類を基に、申請内容の審査が行われます。審査期間は補助の種類によって異なりますが、数週間から数ヶ月かかることがあります。
⑤給付金の受け取り
審査が通った場合、指定された口座に給付金が振り込まれます。
申請手続きにおける注意点
申請手続きにおける注意点として、以下の3点があります。
まず、申請期限の確認です。
多くの公的制度や保険金の申請には、提出期限が設定されています。
たとえば、出産手当金の申請は出産後8週間以内に行う必要があります。
次に、必要書類のチェックです。
申請に必要な書類は補助の種類によって異なるため、事前にどの書類が必要かを確認しておくことが重要です。
一般的には、申請書、妊娠証明書、収入証明書などが必要とされます。
最後に、提出方法と提案先の確認です。
申請書類を提出する方法(郵送、オンライン、対面など)と提出先(市区町村、ハローワークなど)を確認しておくことで、手続きが円滑に進みます。

申請手続きに不安がある場合は、自治体の窓口やファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。
FPに相談できるサイト
・FP無料相談の保険チャンネル
まとめ
今回の記事のまとめです。
妊娠や出産において経済的な負担を軽減する方法の一つは、公的な保障制度を活用することです。
主な公的保障制度には、次の3つなどがあります。
・出産育児一時金
・出産手当金
・高額療養費制度
さらに、妊婦保険の他にも検討したい保険として、収入保障保険や学資保険があります。
公的制度の申請を行う際に不安がある場合は、自治体の窓口やファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。