先物取引は、株式や商品、通貨などの将来の価格を予測して取引する金融手法です。
現物取引とは異なり、将来の取引に関する契約を交わすことで、リスクを管理しながら投資できるのが特徴です。
本記事では、先物取引の仕組みやメリット・デメリット、そして投資初心者が知っておくべきポイントについて解説します。
この記事で分かること
- 先物取引の仕組み
- 先物取引のメリット・デメリット
- 初心者が知っておくべき投資戦略のポイント

先物取引を活用することで、どのように投資戦略を組み立てられるのか、実践的な視点から学んでいきましょう。
先物取引の特徴と市場の仕組み

投資初心者の方でも一度は耳にしたことがある言葉かもしれませんが、
先物取引は現物の資産を直接取引するのではなく、
将来の価格を予測して契約を結ぶという特徴があります。

まず最初に、先物取引の特徴について見ていきましょう。

先物市場の基本的な仕組み
先物市場は、将来の特定の日付に、特定の価格で資産を購入または売却する契約が行われる市場です。
この取引は、現物の商品(例: 小麦、金、石油)や金融商品(例: 株式、債券、通貨)を対象に行われます。

先物取引には、主に次の3つの特徴があります。
1. 先物契約
先物取引の基本は「先物契約」と呼ばれるもので、これは将来の売買を約束する契約を指します。
たとえば、ある商品を将来の指定された日付に、合意した価格で売買するという契約です。
先物契約の3つのポイント
①取引対象
商品や資産(例:穀物、エネルギー、貴金属、株価指数など)。
②契約単位
取引する商品の標準的な単位が定められています(例:1枚の契約が小麦10,000ポンド分を表す など)。
③満期日
契約が決済される日(例:3か月後、半年後 など)。
2. ヘッジと投機
先物市場は、主に2つの目的で利用されます。
①ヘッジ目的(リスク回避)
例えば、農家が小麦の価格下落リスクを避けるために、先物契約を利用して将来の価格で小麦を販売します。
②投機目的(利益追求)
例えば、ある商品が将来値上がりすると予想する投資家が、低い価格で先物契約を購入し、価格が上昇した時点で売却して利益を狙います。
3. マージンとレバレッジ
先物取引には「マージン」と呼ばれる証拠金制度があります。
マージンとは、契約の全額を支払う代わりに、取引額の一部(証拠金)を預けることで、より大きな取引ができる仕組みです。
この仕組みによって、少額の投資で実際の取引額以上の取引を行うことができ、これを「レバレッジ効果」と呼びます。
レバレッジにより、利益を大きく伸ばせる可能性がある一方で、損失も同様に拡大するリスクがあります。
そのため、マージンやレバレッジの仕組みを十分に理解した上で取引することが求められます。
参照コラム
・証拠金リスクと注意点|維持率・ロスカットの役割や仕組みを解説
先物取引の2つの決済方法
先物契約は、満期日が来ると決済が行われます。
株式などの商品は主に差金決済のみが用いられますが、先物取引の商品には以下の2つの決済方法があります。
先物契約の2つの決済方法
①現物決済
実際に商品が引き渡され、取引が完了する方法。
②差金決済
実際の商品を受け取ることなく、契約の価格差を現金で決済する方法。
先物取引の対象となる商品
先物取引の対象となる商品には、主に以下3つの種類があります。
①商品先物
商品先物とは、金属や農産物、エネルギー資源などの実物商品を対象にした先物取引のことです。
農産物先物
小麦、大豆、とうもろこし、米、砂糖、コーヒーなど。
エネルギー先物
原油、天然ガス、石炭、ガソリン、灯油など。
金属先物
金、銀、銅、プラチナ、アルミニウムなど。
食品先物(飲料)
カカオ、紅茶、オレンジジュースなど。
②金融先物
金融先物とは、株価指数、国債、通貨などの金融商品を対象にした先物取引のことです。
株価指数先物
日経225、ダウ平均、S&P500などの株価指数を対象にした先物取引。
通貨先物(FX先物)
米ドル、ユーロ、円などの外国為替を対象にした先物取引。
金利先物
米国債や日本国債を対象にした先物取引。
株式先物
特定の企業の株式を対象にした先物取引。
③商品・金融以外の先物
商品・金融以外の先物とは、現物商品を対象とせず、天候、排出権などの事象を対象にした先物取引です。
天候先物
気温や降水量など特定の気象条件を対象にした先物取引。
環境関連先物(排出権先物など)
CO₂などの温室効果ガス排出権を対象にした先物取引。
先物取引のメリットとデメリット

第一章でお伝えしたように、先物取引は投機目的で行われることもあれば、取引のリスクヘッジとして利用されることもあります。

次に、先物取引のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
先物取引のメリット
先物取引のメリットには、主に以下の4つがあります。
①レバレッジ効果
少ない元本で大きな取引ができるため、少額でより大きな利益を狙うことができます。
➁ヘッジ機能
価格変動リスクを回避する手段として活用でき、予測される価格変動に対して事前に対応策を講じられます。
③取引対象の多様性
農産物や金属、エネルギー、株価指数など、さまざまな商品を取引対象として選べるため、分散投資を実現できます。
④流動性の高さ
先物市場は取引量が多く、比較的売買がスムーズに行えるため、希望するタイミングで取引しやすい傾向があります。
先物取引のデメリット
一方で、先物取引のデメリットには、主に以下の4つがあります。
①リスクの高さ
レバレッジを使用することで、予想に反した価格変動が起きた場合、元本以上の損失を被る可能性があります。
➁期限の存在
先物取引には決済期限が設定されており、期限内にポジションを閉じないと、取引が強制的に決済されることがあります。
③専門的な知識が必要
市場動向や商品特性、経済指標などを把握するためには一定の知識が必要で、投資初心者には難易度が高い場合があります。
④価格変動の大きさ
価格が短期間で大きく変動することがあり、予期しない損失が発生する可能性があります。
オプション取引との違い
先物取引とオプション取引は、いずれも金融商品の価格変動を予測して利益を得る取引方法ですが、それぞれ特徴や仕組みが大きく異なります。

先物取引とオプション取引の特徴を比較してみます。
先物取引
売買契約が結ばれると、買い手と売り手の双方に契約履行の義務が生じ、契約満了時には必ず商品の受け渡しや決済が行われます。
オプション取引
買い手は契約を行使するかどうかを選択でき、行使しないことも可能ですが、売り手は買い手が権利を行使した場合に義務を負います。
参照コラム
・オプション取引入門:コールオプションとプットオプションの違い
先物取引を始める前に知っておくべきこと

先物取引を行う際には、レバレッジや証拠金、契約履行の義務など、基本的な要素を適切に把握しておくことが大切です。

最後に、先物取引を始める前に知っておくべきポイントを確認しておきましょう。

先物取引に伴うリスクについて
先物取引は他の投資方法に比べてリスクも高いため、取引を始める前にどのようなリスクがあるのか、またどのようにリスクヘッジを行うかを考えておくことが大切です。

基本的なリスク対策として、以下のポイントを押さえておきましょう。
リスク許容度の把握と具体的な対策の構築
自身の資金状況や精神的な許容度を考慮し、無理のない範囲で取引を行うことで、持続的な投資が可能になります。
また、損失を抑えるための具体的な対策を事前に講じておくことも重要です。

具体的な対策としては、以下3つの方法があります。
・損切りラインの設定
・ポジションの適切な管理(過剰に持ちすぎないこと)
・資金配分を工夫し、資金全体の一部だけを取引に充てること
取引口座の開設方法
先物取引口座の開設は、次5つのステップで進めることができます。
1. 証券会社の選定
手数料や提供商品、取引ツールの使いやすさなどを比較して、証券会社を選びます。
2. 必要書類の準備
口座開設には、以下の書類が一般的に必要です。
・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
・マイナンバー確認書類(通知カードや住民票の写し)
・収入証明(場合によっては求められる)
3. 口座開設申込書の提出
証券会社のウェブサイトや店舗で申込書を提出します。
4. 審査と口座開設
証券会社が申込内容を審査し、審査が通れば、取引口座が開設され、ログイン情報が送付されます。
5. 資金の入金
口座に資金を入金し、証拠金を準備すれば取引を開始できます。

先物取引を行う際は、基礎知識とリスク管理をしっかり身につけ、計画的に進めましょう。
資産運用について相談できるサイト
・資産運用の相談なら【オンアド】
まとめ
今回の記事のまとめです。
先物取引は、将来の特定の日に合意した価格で商品や資産を売買する契約です。
取引対象には実物商品(小麦、金、石油など)や金融商品(株式、債券など)があり、価格変動を予測してリスク管理や投機に利用されます。