デリバティブとは、株式や債券、為替などの原資産から派生した金融商品で、一般に「金融派生商品」とも呼ばれます。
一見複雑に感じられることもありますが、代表的な取引には先物・オプション・スワップ取引があり、例えば株価が下落した際に損失を抑える保険のような役割も果たします。
この記事では、デリバティブに関連する主要な用語とその意味をわかりやすく解説していきます。
この記事で分かること
- デリバティブの基本用語
- デリバティブ市場に関する用語
- デリバティブのリスクに関する用語

デリバティブ取引でよく使われる用語について、一緒に学んでいきましょう。
デリバティブの基本用語

そもそも、デリバティブとは、株式や債券、為替などの原資産の価格変動に基づいて価値が決まる金融商品です。

まずはじめに、デリバティブ取引の代表的な3つの種類を確認していきましょう。
1.先物契約とは?
先物契約(Futures)は、将来の特定の日にあらかじめ決められた価格で商品や金融資産を売買する契約です。
主にリスクヘッジや投機目的で利用され、取引はレバレッジを活用できるため、少ない資金で大きなポジションを取ることができます。

先物取引の主な特徴は以下の3つです。
①ヘッジと投機
価格変動リスクを回避したり、利益を狙ったりするために活用されます。
➁レバレッジ
少ない資金で大きな取引が可能ですが、その分リスクも伴います。
③決済方法
取引後は現物の受け渡しか現金決済により決済が行われます。
先物契約に関するコラム
・先物取引初心者ガイド:基本知識とリスク管理を学ぶ
2.オプション取引とは?
オプション取引(Options)は、特定の資産をあらかじめ決められた価格で売買する権利を売買する金融商品です。
主に、価格変動リスクのヘッジや投機目的で活用され、購入者の最大損失は支払ったプレミアム(オプション代金)に限定されますが、売却者は場合によっては無限の損失を被るリスクがあります。

オプションには主に、以下の2種類があります。
①コールオプション
資産をあらかじめ決められた価格で購入する権利。
②プットオプション
資産をあらかじめ決められた価格で売却する権利。
オプション取引に関するコラム
・オプション取引入門:コールオプションとプットオプションの違い
3.スワップ契約とは?
スワップ契約(Swaps)は、2者間で特定の期間にわたりキャッシュフローや利息を交換する金融契約で、主にリスク管理や投資戦略に利用されます。

代表的なスワップ契約の種類は、以下の3つです。
①金利スワップ
固定金利と変動金利を交換し、金利変動リスクをヘッジする。
②通貨スワップ
異なる通貨の金利や為替リスクを交換する。
③商品スワップ
商品価格の変動リスクを交換する。
スワップ取引に関するコラム
・スワップ取引の基礎:仕組みと活用方法を徹底解説
デリバティブ市場に関連する用語

デリバティブ取引では、取引戦略・市場分析・リスク管理の各場面で、欠かせない専門用語が数多く登場します。

この章では、その中でも特に重要な3つの用語を取り上げて解説します。
1.ヘッジ(Hedge)とは?
ヘッジとは、デリバティブを活用して原資産の価格変動による損失リスクを回避・軽減する取引手法です。
活用目的
・株式や商品価格の急変動に備えたリスク管理
・事業活動や投資の安定化
仕組み
・原資産の価格が動いた際に、デリバティブの利益が損失を相殺するようなポジションを構築。
具体例3選
①株式ヘッジ
株価下落に備え、プットオプション(売る権利)を購入することで、株価が下がった際に損失を補う。
➁為替ヘッジ
輸出企業がドルの下落リスクを回避するため、ドル売りの先物取引を行う。
③商品ヘッジ
農家が将来の小麦価格下落に備え、小麦の先物売りを行う。
2.レバレッジ (Leverage)とは?
レバレッジとは、少額の資金(証拠金)を用いて元本以上の取引を行い、効率的に資金を運用する仕組みです。
仕組み
・例えば、証拠金が10万円で10倍のレバレッジを使う場合、約100万円分の取引が可能。
メリット
・少額の資金で大きな利益を狙える。
・資金効率を高め、投資の幅が広がる。
デメリット
・損失も同様に拡大するため、リスク管理が重要。
・相場が急変した場合、証拠金が不足して強制的にロスカット(決済)されるリスクがある。
具体例3選
①FX取引
レバレッジを使い、少額の資金で大きな外貨取引を行う。
➁CFD取引
株価指数や商品先物のCFD取引では、証拠金の何倍もの取引が可能。
③先物取引
先物契約では、少額の証拠金で大きな取引額を動かせる。
3.ボラティリティ (Volatility)とは?
ボラティリティは価格変動の度合いを示す指標で、リスク管理や取引戦略に活用されます。
仕組み
・ボラティリティが高い場合、価格変動が大きく、リスクも利益も増加。
・ボラティリティが低い場合、価格が安定し、リスクも小さい。
種類
・ヒストリカル・ボラティリティ
過去の価格変動に基づいて計算される。
・インプライド・ボラティリティ
オプション価格に反映された、将来の価格変動の予想値。
活用例2選
①リスク管理
ボラティリティが高い市場では、ポジションを小さくする。
②オプション取引
インプライド・ボラティリティの高い時はプレミアムが上昇。
デリバティブのリスクに関する用語

どの投資にもリスクが伴いますが、デリバティブ取引も例外ではありません。

最後に、デリバティブに関する3つのリスク用語を解説し、リスク管理の基本についてもご紹介します。
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1.信用リスク(Credit Risk)とは?
信用リスクとは、貸し手や投資家に対して、借り手や債務者が約束された支払いを履行しない可能性を指します。
これには、元本や利息の支払いが遅延したり、支払われなかったりするリスクが含まれます。

信用リスクの種類とその管理方法について、以下でそれぞれ確認していきましょう。
信用リスクの主な種類
信用リスクの主な種類には、次の3つが挙げられます。
①債務不履行
借り手が返済期日までに元本や利息を支払えなくなるリスク。
具体例: 企業が借金の返済に失敗する。
➁信用格付けの低下
借り手の信用状況が悪化し、信用格付けが下がることによるリスク。
具体例: 政府や企業の信用格付けが引き下げられ、投資家が保有する資産の価値が下落する。
③カントリーリスク
政治的または経済的な状況が影響して、外国の企業や政府が約束された支払いを行わないリスク。
具体例: 政治不安や経済危機により、外国の企業や国が債務不履行を起こす。
信用リスクの管理方法
信用リスクの管理方法には、次の3つが挙げられます。
①信用評価
借り手の信用力を事前に評価するため、信用調査や信用格付け機関の情報を使用。
具体例: 企業の財務状況や過去の支払い履歴を調査。
➁担保
借り手が支払いを履行できない場合に備えて、担保を設定する。
具体例: 住宅ローンにおける不動産担保。
③クレジットデリバティブ
信用リスクを転嫁するための金融商品を使用。
具体例: 企業のデフォルトリスクをヘッジするために、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を購入。
2.流動性リスク(Liquidity Risk)とは?
流動性リスクとは、資産を市場で迅速に、または希望する価格で売却できないリスクを指します。
具体的には、資産を現金化したいときに、十分な買い手がいなかったり、市場の取引が不活発であるために、想定よりも低い価格でしか売却できない可能性があることを意味します。
流動性リスクの主な種類
流動性リスクの主な種類には、次の2つが挙げられます。
①市場流動性リスク
市場全体が十分に活発でない、または買い手と売り手の数が少ない場合に発生。
具体例: 特定の株式や債券が市場でほとんど取引されておらず、売りたいときに買い手が見つからない。
➁資産流動性リスク
特定の資産が市場で容易に売却できない場合に発生。
具体例: 不動産や非公開株式など、取引所で頻繁に売買されず、売却が困難な資産。
流動性リスクの管理方法
流動性リスクの管理方法には、次の3つが挙げられます。
①資産の分散
流動性の高い資産と低い資産を分散して保有することで、特定の資産に依存しないようにする。
具体例: 不動産と株式の両方を保有し、株式で流動性リスクを補う。
②市場状況の監視
市場の動向や取引量を定期的に確認し、流動性が低下している場合には売却を見送る、または売却戦略を再考する。
具体例:取引量が急減した銘柄の売却を控え、市場が安定してから売却する。
③キャッシュポジションの確保
すぐに現金が必要な場合に備えて、一定の現金を保有しておく。
具体例:短期国債や現金預金を一定割合保持し、流動性不足時の資金繰りに備える。
3.カウンターパーティリスク(Counterparty Risk)とは?
カウンターパーティリスクとは、取引において相手方(カウンターパーティ)が契約上の義務を履行できないリスクを指します。
つまり、取引相手が支払いをしない、または契約条件を守らないことによって生じるリスクです。
カウンターパーティリスクの主な種類
カウンターパーティリスクとは、資産を市場で迅速に、または希望する価格で売却できないリスクを指します。
①信用不履行リスク
相手方が元本や利息の支払いなどを遅延、または完全に履行しないリスク。
具体例: 企業間の取引で相手企業が破産し、契約を履行できない場合。
➁決済リスク
取引の決済過程で相手方が資金の支払いを怠ったり、証券の引き渡しが行われなかったりするリスク。
具体例:売買契約成立後に買い手が代金を支払わず、売り手が商品の引き渡しを拒否する場合。
カウンターパーティリスクの管理方法
カウンターパーティリスクの管理方法には、次の3つが挙げられます。
①信用評価
取引相手の信用格付けや財務状況を確認して信用力を評価する方法。
具体例: 企業の財務データや過去の取引履歴を基に、信用評価を行う。
②契約条件の確認
支払い条件や履行義務を明確に規定し、担保や保証を設定するなど、不履行時のリスクに備える方法。
具体例:取引契約にペナルティ条項を盛り込み、不履行時の対応を明示する。

投資では多くの専門用語が使われます。
以下の記コラムでも、投資に関連する用語について解説しているので、ぜひ合わせてご覧ください。
参照コラム
・ストライク・プレミアムの違い|オプション取引用語集【投資初心者向け】
まとめ
今回の記事のまとめです。
デリバティブは、株式や為替などの原資産を基にした金融商品です。
取引では、ヘッジやレバレッジなど専門用語が多く登場するため、基本的な意味を理解しておくことがリスクヘッジにつながります。