『不動産の有効活用の仕方にはどういうものがあるの?』
FP試験では、この「不動産の有効活用」に関する問題が頻出しますが、私たちの暮らしにも役立つ大切な知識です。
たとえば、相続した土地をどう使うか、老後の収入源として賃貸経営を始めるか、遊休地を有効活用するかなど、ライフステージに応じて活かす場面はさまざまです。
そこで、本記事では、代表的な6つの不動産活用方式の特徴について詳しく解説します。
この記事で分かること
- 代表的な不動産活用方法の種類
- 各不動産活用方法のメリット・デメリット
- 不動産活用を検討する際の注意点

不動産活用にはどのような方法があるのか、詳しく見ていきましょう。
不動産活用方式とは?

そもそも、不動産活用とはどのようなことを指すのでしょうか?
まずは、その基本的な概要について理解を深めていきましょう。
不動産の活用方法にはどんな種類がある?
日常生活では、土地の賃貸や売却、再開発など、さまざまな不動産活用方法を耳にすることがあるかと思います。

不動産活用方法には、主に次の4つなどが挙げられます。
①売却
不動産を一括で売却し、まとまった金額を得る方法。
②賃貸運営
住宅や商業施設を賃貸に出し、収益を得る方法。
③貸し倉庫・レンタルスペースの運営
自宅や商業施設の空きスペースを活用して、貸し倉庫やレンタルスペースとして収益を得る方法。
④再開発・リノベーション
古い建物や土地を再開発し、新たな建物を建てて収益化する方法。
不動産活用方式の基本概要
不動産活用方式とは、所有している土地や建物を活用して、収益や資産価値を最大化するための手法です。
これには、さまざまな活用方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

代表的な不動産活用方式には、次の6つが挙げられます。
①自己建設方式
所有者が自ら建物を建設し、賃貸などで運用する方式。
②等価交換方式
土地を提供し、代わりに建物の一部(区分所有)を取得する方式。
③建設協力金方式
借主から資金(協力金)を得て、建物を建設・貸与する方式。
④事業受託方式
専門事業者に運営を委託し、収益の一部を得る方式。
⑤定期借地権方式
一定期間、土地を貸し出し、期間満了で更地に戻す方式。
⑥土地信託方式
土地を信託銀行に信託し、運用収益を受け取る方式。

上記6つの活用方式については、第2章で詳しく解説していきます。
不動産活用方式を学ぶことのメリット
不動産活用方式について理解を深めておくことで、不動産に適した活用方法を検討しやすくなり、収益の向上につながる可能性があります。
また、不動産会社との交渉や提案の場でも、状況に応じて柔軟に判断しやすくなり、将来の相続や老後に向けた資産の整理や計画を立てる際にも、役立てることができます。

不動産の相続は、ライフプランにおける重要なポイントの一つですね。
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不動産活用方式の6つの種類

先ほどの章で少し述べましたが、不動産活用方式には主に6つのタイプがあります。

この章では、6つの活用方式について、資金調達や建物の管理方法の違いを見ていきましょう。
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①自己建設方式
自己建設方式とは、土地を所有している人が自ら資金を調達し、自身の名義で建物を建てて運営する方式です。
不動産経営の計画から資金調達、管理・運営までをすべて自身で行うため自由度が高く、外部委託にかかる費用を抑えられることから、高い収益が期待できるのが特徴です。
ただし、すべての判断と実行を自分で担う必要があるため、知識や経験が不足している場合にはリスクも大きくなります。

外部に依存せず、自ら経営に関わりたい人に適した手法と言えます。
②等価交換方式
等価交換方式は、土地所有者が自身の土地を提供し、その代わりに新たに建設される建物の一部または全部を受け取る運用方式です。
この方式では、土地と建物の交換が等価で行われ、土地所有者は開発費用を負担せずに土地を活用できます。
そのため、土地所有者にとっての大きなメリットは、資金調達の負担なく土地を有効活用できることです。
ただし、開発業者に依存するため、計画通りに進まなかったり、完成した建物の価値が予想外である場合、土地所有者は十分なリターンを得られない可能性があります。

なお、土地の提供方法には『全部譲渡方式』(すべて譲渡)と『部分譲渡方式』(一部譲渡)の2つがあります。
③建設協力金方式
建設協力金方式とは、土地所有者が開発業者に一定の金銭を提供し、その資金で土地に建物を建設する運用方式です。
主に事業用建物の建築に活用され、土地所有者(貸主)は出店希望者(借主)から無利息で融資を受けて建物を建設します。
完成した建物は、借主の希望に基づいて設計され、借主は建設協力金として資金提供を行います。
これにより、土地所有者は完成した建物からテナント料を得ることができるというメリットがあります。

この方式では、土地と建物の所有権は地主にありますが、建物の管理・運営は開発業者が行います。
④事業受託方式
事業受託方式とは、土地所有者が自ら土地を保有しつつ、不動産事業の企画・建設・運営管理といった業務を、開発業者に委託して行う運用方式です。
開発業者の専門的なノウハウを活用できる点が大きなメリットですが、その一方で、委託に伴う報酬の支払いが必要となる点がデメリットです。

報酬の支払いが必要な点はデメリットですが、土地を保持したまま事業を進められることがメリットです。
⑤定期借地権方式
定期借地権方式は、土地所有者が一定期間土地を貸し、デベロッパーがその土地に建物を建てて事業を行う運用方式です。
土地所有者は土地を提供し、建設費用や運営費用はデベロッパーが負担するため、資金負担が少ないことがメリットです。
しかし、契約終了後には土地を返還しなければならないことがデメリットとして挙げられます。

定期借地権は、種類によって契約期間が異なる点にも注意が必要です。
⑥土地信託方式
土地信託方式は、土地所有者が自らの土地を信託会社に預け、その土地を活用して不動産事業を行う運用方式です。
この方式のメリットは、土地所有者が土地の運用を信託会社に委託できるため、運営や管理の負担を軽減できる点です。
一方、デメリットとしては、信託会社への手数料や報酬が発生するため、そのコストがかかることが挙げられます。
また、信託期間中は土地や建物の名義が信託会社に移転するため、土地所有者は直接的な管理や運営を行えない点も考慮する必要があります。

なお、信託期間が終了すると、土地は土地所有者名義に返還されます。
6つの不動産運用方式のポイント(所有権、資金調達、管理運営)
先ほどご紹介した6つの不動産運用方式において、押さえておくべきポイントは、
所有権、資金調達、管理運営などの権利関係です。
所有権がどちらに帰属するかによって、土地の利用方法や運営の自由度が異なります。

6つの運用方式の権利関係について、以下図1の表で確認してみましょう。
資金調達 | 建物の管理・運営 | 所有権・土地 | 所有権・建物 | |
---|---|---|---|---|
自己建設方式 | 土地所有者 | 土地所有者 | 土地所有者 | 土地所有者 |
建設協力金方式 | テナント | テナント | 土地所有者 | 土地所有者 |
等価交換方式 | 開発業者 | 土地所有者 | 開発業者・土地所有者 | 開発業者・土地所有者 |
事業受託方式 | 土地所有者 | 開発業者 | 土地所有者 | 土地所有者 |
定期借地権方式 | 借地権者 | 借地権者 | 土地所有者 | 借地権者 |
土地信託方式 | 信託会社 | 信託会社 | 信託会社 | 信託会社 |
不動産活用時に注意すべき点

先ほどの章で解説したように、不動産活用にはさまざまなタイプがあることはご理解いただけたかと思います。
最後に、不動産活用を検討する際に注意すべき点を見ていきましょう。
都市計画法と用途地域の理解
不動産を活用する際には、「都市計画法」と「用途地域」に関する理解が欠かせません。
都市計画法は、都市の健全な発展と秩序を保つことを目的とした法律で、土地の利用方法や建物の高さ・用途などに関する制限を定めています。
用途地域は、この都市計画法に基づき、各地域で許可される土地利用の目的を分類したもので、住宅地・商業地・工業地などに区分されます。
これらにより、建物の高さや容積率、建ぺい率といった建築に関する細かなルールが設けられているため、事前に確認しておくことが大切です。

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まとめ
今回の記事のまとめです。
不動産活用方式には、自己建設方式や等価交換方式など、6つの種類があります。
それぞれ資金調達の方法や管理体制が異なるため、各方式の特徴をしっかり押さえておきましょう。