資産運用にはさまざまな方法がありますが、その中でも「J-REIT(不動産投資信託)」は注目すべき選択肢の一つです。
J-REITは、個人投資家でも手軽に不動産市場に投資できる方法として、近年人気を集めています。
しかし、J-REITがどのような仕組みで成り立っているのか、また、一般的な不動産投資とは何が異なるのかを理解している方は、意外と少ないかもしれません。
本記事では、J-REITの基本的な仕組みを解説し、さらに不動産投資との違いを明確にします。
この記事で分かること
J-REIT(不動産投資信託)の基礎知識
J-REIT(不動産投資信託)は、株式や債券と同様に取引できる投資商品です。
まずは、J-REITがどのようなものかについて、一緒に学んでいきましょう。
そもそも、J-REITってどんな意味?
J-REIT(不動産投資信託)は、不動産に関連する投資商品の一種で、不動産投資の収益を投資家に還元する仕組みです。
投資家は運用会社を通じて不動産に投資し、その収益として賃料収入や売却益を得ます。
この収益は、配当金として投資家に還元されます。

J-REITは、日本不動産投資信託(Japan Real Estate Investment Trust)の略称です。
J-REITの仕組みと種類
J-REITの仕組みと種類について、それぞれ簡潔にまとめます。
J-REITの仕組み
①不動産運用会社が複数の不動産を取得し、J-REITを設立する。
➁投資家はJ-REITの投資口を購入し、J-REITに出資する。
③不動産運用会社は、購入した不動産から得られる収益(賃料収入や売却益)をJ-REITに収益として還元する。
④J-REITは、収益から経費を差し引いた利益を投資家に分配金として支払う。
J-REITの種類
①物件タイプによる分類
オフィスビル、商業施設、住宅などの不動産に投資するJ-REIT。
➁地域による分類
特定の地域や都市に焦点を当てた地域特化型のJ-REIT。
③運用方針による分類
収益を重視した運用や成長を重視した運用など、さまざまな運用方針を持つJ-REIT。
不動産投資とJ-REITとの違い
「J-REITは不動産投資とどこが違うのだろう?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、不動産投資とJ-REITの特徴について、以下でそれぞれご説明します。
不動産投資
- 所有権の有無
投資家が直接物件を所有するため、物件の所有権は投資家にあり、その物件から得られる収益(賃料収入や売却益)は直接投資家に入る。 - 運用方法
投資家が物件の管理や運営に責任を持ち、投資家は入居者の募集や家賃の徴収、メンテナンスなどの管理業務を行う必要がある。 - リスクとリターン
物件の状態や地域経済の影響を直接受けるため、リスクとリターンの関係が密接であり、長期的な収益が期待できる一方で、物件の価値が下落したり、入居者が減少したりするリスクもある。
J-REIT(不動産投資信託)
- 所有権の有無
投資家がJ-REITという不動産投資信託を通じて不動産に投資するため、直接的な不動産の所有権は投資家にはない。 - 運用方法
運用会社が複数の不動産を取得し、その収益を分配金として投資家に還元。
投資家は運用会社を通じて投資を行うため、不動産の管理や運営に関する責任がない。 - リスクとリターン
複数の不動産をポートフォリオとして持つため、リスクの分散効果がある。 - 参入のしやすさ
少額から参加できるため、初心者でも気軽に始めやすい。
物件の購入や管理に比べ、参加のハードルが低い。
不動産投資に関するコラム
・不動産投資ガイド|投資初心者向け
メリットとデメリット
J-REIT投資のメリットとデメリットについて、以下にそれぞれまとめます。
メリット
分散投資が可能
J-REITは複数の不動産に投資するため、単一の不動産に投資するリスクを分散することができます。また、一つのREITで複数の不動産に投資することも可能です。
商品管理のしやすさ
投資家は運用会社を通じて投資を行うため、不動産の管理や運営に関する責任がない。そのため、不動産を所有・管理する必要がなく、管理にかかる手間やリスクが軽減されます。
定期的な分配金の還元
J-REITは賃貸収入などから分配金を支払うことが一般的であり、投資家に定期的な収入を提供します。
デメリット
市場リスクを伴う
J-REITは株式市場の変動や不安定性に影響を受けます。また、不動産市場の変動や景気の影響を受けるため、収益や資産価値が変動する可能性があります。
節税効果にはつながりにくい
不動産投資とは異なり、維持管理費や物件取得費を経費として計上できません。また、分配金が出るたびに課税がかかるため、節税面での利点が限定されます。

何事もメリットに気を取られがちですが、デメリットを理解しておくことも重要です。
関連コラム
・レバレッジ型とインバース型投資信託の特徴とリスク管理
J-REIT選びでチェックすべきポイントとは?
では、実際にJ-REITを選ぶ際には、どこをチェックすれば良いのでしょうか?
J-REITを選ぶ際に押さえておくべきポイントは、以下の4つです。
- 利回りの高さを重視
分配金利回りが高い銘柄を選ぶ。通常、株式の配当利回りよりも高い傾向がある。 - 分配頻度の確認
年2回分配金がもらえる銘柄を選ぶ。年1回しか分配金をもらえない銘柄もある。 - NAV倍率のチェック
NAV倍率を確認し、1倍未満が割安とされる。NAVは価格が純資産の何倍かを示す指標。 - 投資主優待制度の有無
投資主優待制度のある銘柄を選ぶ。不動産の内容を知ってもらう目的で実施され、施設入所の割引などがある。

3.NAV倍率のチェックと4.投資主優待制度の有無について、次の章で解説します。
NAV倍率チェック
NAV倍率のチェックは、J-REITを選ぶ際に重要な要素です。
NAV倍率は、一口当たりの純資産価格を示し、J-REITの割安・高値を判断するのに役立ちます。
一般的にはNAV倍率が1未満の場合、J-REITが割安であると考えられます。
NAV倍率のチェックを通じて、投資家は適切なタイミングでJ-REITを選択することができます。
参照サイト
・不動産投資信託・REITの分析に欠かせない重要指標「NAV倍率」とは? 徹底解説。 | マネリテ!「株式投資初心者の勉強 虎の巻」
株主優待制度チェック
J-REITには一部の銘柄で株主優待が提供されることがあります。
これは、不動産を運用する企業であるJ-REITが、投資する株主に対して特典を提供するためです。
株主優待の内容は銘柄によって異なり、施設利用の割引や特別イベントへの招待などが一般的です。
各J-REITの公式ウェブサイトやIR資料で株主優待制度を確認できます。
以下のグラフは株主優待を実施するJ-REITの銘柄です。
銘柄名 | 優待内容 | 優待権利確定月 |
ヘルスケア&メディカル投資法人 | 自社商品 | 1・7月 |
いちごホテルリート投資法人 | 旅行・宿泊,娯楽レジャー | 1・7月 |
投資法人みらい | 旅行・宿泊 | 4・10月 |
インヴィンシブル投資法人 | 旅行・宿泊 | 6・12月 |
ジャパン・ホテル・リート投資法人 | 旅行・宿泊 | 6月 |
出典:会社四季報
※優待内容は2023年8月下旬の調査時点のものとなっています。
J-REITの始め方|新NISAを活用する
最後に、J-REITの始め方について見ていきましょう。
J-REITを始める際には、新NISAを活用することが一つの方法です。
新NISAを利用することで、節税効果を得るだけでなく、その他にもさまざまなメリットがあります。
J-REITの購入方法
J-REITは証券取引所で取引されています。
J-REITを取り扱う証券会社(ネット証券など)に登録すれば、REITを購入できるようになります。
株やFXと同様に、証券会社に買い注文を出すことでREITを購入できます。
J-REITの投資単位は一口で、銘柄によって購入できる単価は異なり、1万円から10万円など様々です。
分配金は投資した企業の決算日から3カ月以内に受け取ることができます。
新NISA活用|J-REIT
新NISAを活用することでJ-REITに投資することが可能です。
新NISAには成長投資枠と積立投資枠の2つの投資枠があります。
- 非課税枠の活用
新NISAの成長投資枠では、特定の投資対象(株式や投資信託など)について、一定額までの利益が非課税となります。 - 分配金の再投資
成長投資枠を活用してJ-REITに投資する場合、J-REITが配当を支払った際にそれを再投資することができます。 - 長期的な資産形成
J-REITは不動産に投資することで安定した収益を得ることができるため、成長投資枠を活用して長期的な資産形成を図ることができます。

新NISAの特徴やネット証券での口座開設については、以下の記事をご参照ください。
まとめ
以上が今回の記事のまとめです。
J-REIT投資とは、不動産投資信託を通じて不動産市場に間接的に投資する方法です。
これは、直接不動産を購入して管理するのではなく、J-REITを通じて不動産ポートフォリオに投資する形になります。
J-REIT投資を始める際は、まず自身の投資目的やリスク許容度を明確にし、それに合ったJ-REITを選ぶことが重要です。
また、新NISAを活用すると、J-REITへの投資が可能になり、非課税枠を利用して分配金の再投資や長期的な資産形成のメリットを享受することができます。
注意事項
- 本情報については、情報提供のみを目的として作成されたものであり、著者は利用者に対し、何らかの行動をとることを勧誘するものではありません。
- 本WEBサイトに示される各REITの過去の実績及び将来の予想実績について、将来の結果を保証するものではございません。万一利用者がこの情報に基づいて損失を被った場合、著者はいかなる損害に対しても一切の責任を負うものではありません。