資産形成において、日本は貯金大国と言われています。
実際、筆者の周りでも、資産運用をしている人よりも、貯金に資金を当てている人の方が断然多いです。
一方、アメリカは日本に比べて国民の資産運用への意識が高く、資産形成のスピードも速い傾向にあります。
資産形成が速いことは、将来の経済的負担を軽減するメリットを含んでいます。
この記事では、日本とアメリカの資産形成に対する意識の違いと、それに伴う運用方法の違いについて解説します。
この記事で分かること
- アメリカにおける資産形成と資産運用の特徴
- 日本とアメリカの資産形成の違い
- 日本で実践できる効果的な資産運用法

なぜアメリカでは資産形成のスピードが速いのか、一緒に見ていきましょう。
アメリカの資産形成に学ぶ投資法

そもそも、なぜアメリカの資産形成から学ぶ必要があるのでしょうか。
それは、アメリカでは資産形成の中心に株式や投資信託といった投資があり、効率的に資産を増やす仕組みが整っているからです。
まずは、アメリカの資産形成に学べる投資法について見ていきましょう。
アメリカの資産形成の特徴
アメリカの資産形成にはいくつかの特徴がありますが、ここでは代表的な3つを取り上げます。
- 積極的な資産運用意識
アメリカでは、投資や資産形成に対する意識が高く、個人投資家や機関投資家が市場に積極的に参加している。 - 税制の影響
アメリカの税制は資産形成に影響を与える重要な要素であり、特典や節税手段を活用して投資収益の最大化や資産の成長を促進している。 - 先進的な投資アプローチ
アメリカの投資家やファイナンシャルプランナーは、ポートフォリオの多様化やリスク管理、長期的な視野に基づいた投資など、先進的な投資アプローチを積極的に採用している。
アメリカと日本の資産形成の比較
アメリカと日本の資産形成を比較すると、最も異なる点は資産形成に対する意識の違いです。
アメリカでは、多くの人々が資産形成を積極的に考え、投資や貯蓄を通じて将来の経済的安定を追求します。
一方で、日本では貯蓄志向が強く、安全な資産(主に預金や公的年金)への投資が一般的です。
また、アメリカではリスクを取りながらも高いリターンを追求する投資文化が根付いており、株式や不動産などのリスク資産への投資が一般的です。
これに対し、日本では安定した収益を重視する傾向があり、リスクを避けるために保守的な資産運用が好まれます。
アメリカでの資産形成スピードが速い理由
アメリカでの資産形成が速い理由は、資産運用の内訳の違いが大きな要因です。
しかし、前述したように、日米の個人の資産形成における違いは、資産形成への意識の差も影響していることも前提です。

ここでは改めて、日米それぞれの資産形成の内訳を見てみましょう。
下記図1をご覧ください。

引用サイト:野村アセットマネジメント:「米国と日本の個人金融資産の構成比較」
上記図1のグラフが示す通り、アメリカの資産形成では、株式と投資信託が合わせて51%を占めています。
一方で、日本の資産形成では現金や預金が54.3%となっています。
この違いが資産形成のスピードにどう影響するかという点について考えてみます。
株式や投資信託などの投資は複利の恩恵を受けることができるという大きな利点があります。
一方、現金や預金は運用されていないため、資産の増加に直接貢献しません。
そのため、株式などの運用により資産が複利効果によって指数関数的に増加することが可能となります。
なぜ今、私たちに資産形成が必要なのか
資産形成が重要とされる理由はさまざまありますが、ここでは特に重要な3つのポイントを紹介します。
①経済的安定と自立の可能性
資産形成を進めることで、将来にわたって収入に依存しすぎず、自立した生活を送ることが可能になります。
➁生活の品質向上
資産が増えることで、教育や住まい、趣味などにかけられる選択肢が広がり、生活の質を高めることができます。
③不測の事態への備え
病気や失業、災害など予期せぬ事態が起きたときでも、備えた資産が生活を支える安心材料となります。

特に不測の事態への備えは、資金が必要となるケースが多く、そのためには早い段階での資産形成が大切です。
合わせて読みたいコラム
・貯金がない状態からの資産形成とは
アメリカの様々な資産形成法

アメリカでは、年金制度や401(k)プランに加え、不動産投資など様々な方法で資産形成が行われています。

この章では、アメリカにおける資産形成の主な種類について見ていきましょう。
アメリカの年金制度
アメリカの年金制度には、以下のような特徴があります。
主要な年金制度
Ⓐ社会保障制度:
労働者が社会保険料を支払い、定年後に年金を受け取る仕組み。
Ⓑ個人運用型退職金制度:
401(k)やIRA(個人退職口座)など、個々が運用を行う退職金制度が広く利用されている。
運用管理
自己責任での運用:
労働者が自身の年金資産を管理・運用する必要があり、企業年金は減少傾向にあります。
確定拠出年金の運用|401(k)プラン
401(k)プランは、民間営利企業の従業員を対象にしたアメリカの確定拠出個人年金制度です。
仕組みとしては、会社の従業員が給与の一部をすぐに受け取らず、拠出金として401(k)口座に預けておけるというものです。
つまり、給与の受け取りを将来に遅らすことができるというものです。

401(k)プランのメリットをまとめると、以下のようになります!
401(k)プランのメリット
①繰延べた課税分の複利効果を得れる
➁会社のマッチングプランを利用可能
③リタイアしてから積立額を引き出せる
不動産投資
アメリカにおける不動産投資についても理解しておきましょう。
一般的にアメリカにおける不動産投資は、以下3つのような形態に分けることができます。
1. 不動産投資信託(REITs)
REITsは不動産に投資するための株式市場で取引可能な投資商品です。
2. 不動産賃貸経営
投資家は土地や物件を購入し、売買や賃貸経営を通じて利益を得ており、これには住宅や商業施設、オフィスビルの建設なども含まれます。
3. 不動産クラウドファンディング
オンラインプラットフォームを通じて、複数の投資家が小額の投資を集め、不動産プロジェクトに投資します。

REIT(不動産投資信託)について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。
参照コラム
・J-REIT戦略!NAV倍率から学ぶ新NISA活用法入門編
日本における資産運用法

アメリカの資産運用について学んだところで、次に気になるのは日本での資産運用の状況です。
日本ではどのような特徴や方法があるのでしょうか。

この章では、日本での資産形成に活用できる2つの公的制度について見ていきましょう。
①iDeCoの活用法
確定拠出年金(iDeCo)は、日本の個人型年金制度の一つであり、以下4つのような特徴があります。
1. 加入条件
原則20歳以上60歳未満なら誰でも加入できますが、企業型確定拠出年金加入者は規約で認められた場合のみ加入可能です。
2. 掛金(拠出額)
加入資格に応じて拠出限度額は異なりますが、掛金は月5,000円以上で1,000円単位で設定できます。
3. 受給方法
運用した資金は原則として60歳以降に、3つの方法から選んで受け取ることができます。
4. 税制優遇
iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となり、運用益は非課税になります。
関連コラム
・iDeCoで老後資産を増やす!確定拠出年金の仕組みとそのメリット
②新NISAの活用
新NISA(少額投資非課税制度)は、個人が投資信託などに投資した際に得られる配当金や譲渡益が、一定の非課税枠内で非課税になる制度です。
①非課税保有期間が無期限
つみたて投資枠と成長投資枠の保有期間に上限がなくなり、長期的な資産運用が可能。
➁年間投資枠の拡大
年間の非課税投資枠が拡大し、つみたて投資枠と成長投資枠を組み合わせることで、年間最大360万円まで投資が可能。
③口座開設期間の恒久化
NISA口座の開設期間に期限がなくなり、いつでも口座を開設して投資を始められる。
関連コラム
・新NISAで始める資産運用!SBI証券での口座開設方法も解説
長期的な資産運用戦略を学ぶメリット

結論から言えば、投資を行っても必ずしも資産が増えるとは限りません。
なぜなら、株式や投資信託、不動産などのリスク資産は、価格が上がるだけでなく下がる可能性もあり、資産価値が減少するリスクがあるからです。

上記のようなリスクを抑えるために、この章では長期投資について学んでいきましょう。

長期積み立て投資
長期積み立て投資は、投資家が定期的に一定期間ごとに一定額を投資に積み立てることで、長期的な資産形成を目指す投資戦略です。
特にアメリカの場合、長期積み立て投資は一般的であり、多くの個人投資家や機関投資家が採用しています。

アメリカの長期積み立て投資には、主に以下4つの特徴があります。
1. 長期的な経済成長の期待
アメリカは世界有数の経済大国であり、長期的な経済成長に伴って資産が増える可能性があります。
2. 多様な投資機会
アメリカには株式市場や債券市場、不動産市場など多様な投資機会があり、投資家はこれらを通じて長期的な成長を目指せます。
3. 複利効果の活用
長期積み立て投資では、複利の力によって資金の成長分も再投資され、長期間で効率的に資産を増やすことが可能です。
4. 税制上の優遇措置
アメリカでは、長期投資に対してキャピタルゲイン税の軽減やIRA・401(k)などの税制優遇口座が設けられ、投資家の資産形成を支えています。
金融資産の資産運用方法
そもそも、金融資産の運用方法にはどんな種類があるのでしょうか?

金融資産の運用方法は多岐にわたりますが、代表的なものを、最後に確認しておきましょう。
1. 株式投資
株式市場で企業の株式を購入し、その価値の上昇を期待して利益を得る方法です。
2. 債券投資
政府や企業からの借り入れ証券である債券を購入し、利子や元本を受け取る方法です。
3. 投資信託
資産運用会社が複数の投資家から資金を集め、その資金を様々な金融商品に投資する方法です。
4. 不動産投資
不動産物件を購入し、家賃収入や物件の価値の上昇を通じて利益を得る方法です。
5. ETF(上場投資信託)
様々な資産クラスに投資するための運用方法であり、株式市場で取引可能な投資商品です。

資産運用の疑問は、専門家に相談してみるのもおすすめですよ!

まとめ
今回の記事のまとめです。
日本とアメリカの資産形成の違いは、資産形成への意識にあります。
アメリカでは積極的にリスクを取り高いリターンを狙う投資文化が根付いている一方、日本では保守的な運用が好まれる傾向があります。
そのため、アメリカでは株式や投資信託などリスク資産への投資が一般的で、複利の効果もあり資産が早く増えやすいといえます。